★現状では、完全に取り締まるのは難しいのですね。結局、高いお金を払った消費者が損をする法律なら、すぐにでも改正できるようにすればいいのにと素人感覚では思ってしまうのですがそれも、難しいのですかね。近年の、拝金主義でこれまであった、道徳というものが日本からなくなってきているように感じます。
「産地偽装」摘発に壁 メニュー表記、法の対象外?
産経新聞 11月5日
■不正競争防止法 料理 前例なし
食材偽装が全国のホテルで次々に発覚する中、奈良市の旅館「奈良万葉若草の宿三笠」では、メニュー表記の「大和肉鶏」を当初から使わなかったり、スタッフの一部が「和牛」の代わりに豪州産牛肉の成型肉を使うことを認識していたりするなど「偽装」を疑わせる状況が強まっている。産地偽装をめぐっては、不正競争防止法違反(原産地の虚偽表示)容疑で警察が摘発した例もあるが、レストランなどで出される「料理」では摘発事例がほとんどない。なぜ、取り締まることができないのか。
◆「悪質な事例…」
「三笠」では、メニューに「和牛」と表記しながら、一部の調理場スタッフがアレルギー物質を含む豪州産の成型肉を提供していた。三笠では、アレルギーを申告した利用客に、豪州産牛肉の成型肉ではなく、本物の和牛の「伊賀牛」を提供していた。
成型肉と認識していなければ、改めて“本物”の和牛を出す必要はなく、三笠を運営する近鉄旅館システムズの担当部長は2日、「スタッフは成型肉を使っていると気づいていた」と説明していた。しかし、同社は4日に「ハンバーグのつなぎに牛乳が使われているため、和牛ステーキにした」と説明を一転させた。
不正競争防止法に詳しい正木裕士弁理士(36)は「刑事事件になってもおかしくない悪質な事例だ」と話す。
◆明確な基準ない
食品の産地を偽装した業者に対し、罰則規定のある不正競争防止法に基づき警察が立件したケースもある。中国産ウナギを国産と偽って販売した水産物販売会社「魚秀」(大阪市)や、みそ漬けの牛肉産地を偽った料亭「船場吉兆」(同市)の関係者は同法違反罪で刑事罰が科された。
だが、宮城大の大泉一貫(かずぬき)教授(64)=食品流通事業論=は「不正競争防止法は食品加工業者や小売業者をカバーしているが、料理を出すレストランなどの外食産業は法の網から抜け落ちている」と指摘する。
問題は、不正競争防止法の対象に「料理」が明確に規定されていないことだ。所管する経済産業省は「料理」のメニュー表記について、同法が規定する「広告」や「取引に用いる書類」などに該当する余地を残しているものの、取り締まり対象の「商品」には該当しない-と解釈している。一般感覚では、レストランなどで提供される「料理」も「商品」と同義だが、過去に「料理」が警察に摘発されたり、刑事裁判で判例が示されたりした事例はほとんどないのが実態だ。
三笠では料理だけでなく、販売していたおせち料理でも食材偽装が判明。ボラの卵を使った「からすみ」と称し、実際はタラやサメの卵を使用した「唐千寿」と呼ばれる別の食材を使っており、経産省によると同法の誤認惹起に該当する可能性もあるという。
◆立件のカギは?
農林水産省の調査官「食品表示Gメン」を務めた食の安全・安心財団の中村啓一事務局長(63)は「経営者らしかるべき立場の人が指示した組織的な偽装でなければ、警察も動きづらいのでは」と話す。一方、元最高検検事の奥村丈二中央大法科大学院教授(64)=刑事法=は「経験を積んだ立場の人から話を聞き、仕入れ値の差や、和牛と豪州産成型肉の違いが認識できることを立証すれば認識の問題はクリアできる」と話し、専門家間でも意見は分かれる。
立件の鍵は何か。奥村教授は「悪質性の立証」と指摘する。たとえば、安価な外国産牛肉の成型肉を「和牛」と偽ることで、仕入れ値の価格差から不当な利益を得ようとした「意図」や、「反社会的な行為だという認識」が三笠側にあったかどうかだという。
弁護士の朝見行弘久留米大学法科大学院教授(60)=消費者法=が「確実に立件できる事件しかやらなければ、結局『誤表示』を蔓延(まんえん)させる土壌をつくってしまう」と懸念する。